「人生100年時代」と言われる昨今においては、老後の資金に関して不安をお持ちの方は多いのではないでしょうか。リバースモーゲージはそんな時代における資金確保手段のひとつであり、住まいに居住しながら借り入れを行うことが可能です。
本稿では、そんなリバースモーゲージについての概要や、利用に当たっての注意点を解説します。リタイア後の資金調達方法を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
リバースモーゲージとは?
前述の通り、リバースモーゲージは住まいに住み続けながら融資を受けることが可能で、自宅を担保にして資金の借り入れを行うローン商品です。リバースモーゲージの見込み顧客については、シニア世代がメインとなります。
リバースモーゲージでは毎月利息のみを返済することになり、元金は契約者の死亡後にまとめて返済する形を取ることから、一般的なローンと区別する意味で“逆(リバース)”の名前がついています。
リバースモーゲージの仕組み
リバースモーゲージを利用する際には、まず自宅の評価額を算出し、その額をもとにした融資枠内で融資を受けられます。高齢者層の増加にともないリバースモーゲージを扱う金融機関は年々増加傾向にあり、年金生活だけでは不安がある層にマッチした商品です。
借り入れ可能な金額については、担保とする住まいの評価額の5~8割程度であることが一般的となります。借り入れた資金を受け取る方法としては、以下の通りです。
- 満額を一括での受け取る
- 決まった額を定期的に受け取る
- 融資限度額の範囲内で任意で受け取る
前述のように元金は契約者の死亡後に返済するのが通例で、返済方法としては「担保となった物件の売却」「自己資金」などがあります。なお、元金の返済については利用期間中であっても可能で、金銭的な余裕ができた際には繰上返済が行われるケースもあり得ます。
リバースモーゲージと通常の住宅ローンの違い
リバースモーゲージが通常の住宅ローンと大きく異なる点としては、「死亡時に元利を一括」という返済方法が挙げられます。住宅ローンで毎月返済することになるのは、元金分と利息分ですので、同額の融資であったとしても月々の支出金自体は住宅ローンの方が大きくなりがちです。
リバースモーゲージのメリット
自宅を手放さずに借入ができる
リバースモーゲージはあくまで「住まいを担保にした融資」であるため、借り入れ後も変わらず同じ家に住み続けられます。
もちろん担保に入れた住まいは所有権の移転などはできなくなるものの、住み慣れた自宅を離れずに資金を調達できる点は、“リタイア後のセカンドライフ”との観点で魅力的に感じる方も多いでのはないでしょうか。
高齢でも利用可能
一般的な住宅ローンの活用では、申込時/完済時の年齢に制限があったり、持病があると団体信用保険に保険に加入できなかったりします。
一方で、リバースモーゲージは基本的にシニア世代のための商品ですので、こういった制限は緩くなっています。逆に「申込時の年齢◯歳以上」との下限年齢に関する制限が設けられているケースもありますので、その点には留意が必要です。
支払いは毎月の利息分のみ
前述の通り、リバースモーゲージでは毎月の返済は利息分のみであるケースがほとんどですので、その他のローンよりも毎月の支出を抑えやすいのが特徴です。
言い換えれば、リタイア後も住宅ローンの残債があるなら、リバースモーゲージに借換えすれば毎月の返済額を抑えることが可能とも捉えられます。
リバースモーゲージで避けては通れない3大リスク
長生きリスク
長寿であることを“リスク”と言ってしまうと語弊があるかもしれません。しかし、リバースモーゲージで借り入れ可能な金額は限度がありますので、契約者が長生きした場合は存命中に融資が途絶え、超過分を返済しなければならなくなる可能性があります。
その場合、もし手元に資金がなければ担保にした住まいを手放さなければならなくなります。
金利上昇リスク
リバースモーゲージでローンを組む際には、変動金利で借り入れを行うケースが多々あります。そのため、契約期間が長期に渡ると、金利が上昇してしまう可能性が懸念されます。
金利が上昇すると、他の変動金利の金融商品同様、思っていたほどの資金を借りられなくなったり、月々の返済額が上昇してしまったりしかねません。リバースモーゲージを利用する際にはその点についてもあらかじめ承知しておき、無理のない資金繰りを行うことが必要です。
評価額下落リスク
リバースモーゲージで借り入れ可能な限度額は、住まいの評価額に応じて変動します。不動産の評価額は基本的に毎年見直しが行われるため、担保に入れた物件の不動産価値が下がると、融資限度額も下がってしまうことがあります。
もし、すでに借り入れている資金残高が融資限度額を上回ってしまうと、超過分についても返済する必要が生じます。
リバースモーゲージはどんな人が向いている?
老後も住宅ローンの返済が残る人
ローンの返済スケジュールから、リタイア後も住宅ローンの返済を続けなければならない人はリバースモーゲージの利用が向いているでしょう。前述の通り、リバースモーゲージへ借り換えを行えば月々の支払い額を減らすことが可能です。
定年後は給与の支払いがなくなってしまいますので、毎月支払う固定費を減らすのは賢明な判断と言えるかもしれません。
住まいの相続が必要ない人
「子どもがいない」「子どもは実家を相続する気がない」などの理由で、住まいの遺産相続が必要ない場合もリバースモーゲージが選択肢に入るでしょう。特に、子どもがいない場合は介護が必要な状態になった際にその分の費用を捻出しなければなりませんので、リバースモーゲージも含めた資金調達方法を検討しておく必要があります。
将来はホームに入居する予定の人
介護費用が必要なケースについて前述しましたが、自宅介護ではなく、ホームに入居する予定を立てているなら、リバースモーゲージが視野に入ります。配偶者がいるのかどうかにもよりますが、最終的に自宅を“終の住処”にするつもりがないのなら、遠慮なく担保に入れて、ホームへの入居費用に充てられるでしょう。
リバースモーゲージではなくリースバックの利用も検討しよう
住まいに住み続けながら資金を調達する手段としては「ハウス・リースバック」も挙げられます。リースバックとは、住まいを一度売却し、そのあと買い手となるリースバック業者と賃貸契約を締結して同じ住居に住み続ける仕組みです。
リバースモーゲージとの違いは“借り入れ”ではなく“売却”であるため「住まいの所有権を完全に手放してしまう」点にあります。賃貸契約の内容次第では、ずっと同じ住まいに住み続けられる訳ではない点には留意が必要です。
まとめ
リバースモーゲージは住まいを担保にして融資を受ける金融商品であり、元金の返済は契約者の死亡後に行われるのが特徴です。リバースモーゲージを利用すれば、住み慣れた家に住み続けながら、老後の資金を確保できます。
一方で、リバースモーゲージを利用すれば住まいを子どもに残すのは難しくなってしまいます。さらに、金利や担保にした住まいの評価額の変動によって返済額が上昇するリスクがありますので、リバースモーゲージを利用するなら、それを想定した資金繰りをするつもりでいなければなりません。