空き家を所有しているものの活用予定がない場合、空き家の解体を検討するケースも多々発生するでしょう。そのような方に向けて、本稿では空き家を解体するメリットや注意点、解体費用の相場について解説します。
目次
空き家を解体するか否かの判断基準は?
空き家は放置していると老朽化が進み、災害による倒壊などの危険性が増してしまうため、月に一回程度はメンテナンスを行わなければなりません。空き家の維持には費用や時間が必要であることに加え、毎年固定資産税・都市計画税の支払いが発生します。
つまり、空き家をただ所有しているだけではマイナス資産となってしまうのです。そのため「自分で住む」「賃貸物件として貸し出す」などの手法で有効活用する予定がないのであれば、早期に解体してしまうのが賢明と言えます。
ただし、空き家を共有持分として所有しているなら、解体には共有者全員の同意が必要になる点には留意が必要です。
空き家を解体するメリット
有効活用が難しい空き家は、解体することで以下のようなメリットが得られます。
- 空き家管理の手間がなくなる
- 築古空き家なら解体した方が高く売却できる可能性がある
- 新たに土地のみを活用できる
空き家管理の手間がなくなる
前述のように、空き家は恒常的に維持管理を行わなければなりません。しかし、解体して更地にしてしまえば、定期的にメンテナンスを行う必要性もなくなります。
空き家を維持するためには、実際に空き家に趣いて内外に異常はないかチェックしたり、換気・清掃を行ったりします。もし設備に異常があれば、補修工事なども必要です。
このように空き家のメンテナンスは思わぬ支出が発生する可能性がありますので、解体して管理負担をなくしてしまうのは有効な手段でしょう。空き家の管理方法については、以下の記事でより詳しく解説していますので、合わせてご参照ください。
築古空き家なら解体した方が高く売却できる可能性がある
空き家管理の負担から開放されるためには早期売却もひとつの手段ですが、築古の物件を売りに出すとなると、なかなか買い手が見つからないことも懸念されます。
そういった場合は、空き家を解体して更地にし、土地のみで買い手探しを行った方がより高く、かつスムーズに売却できる可能性があります。
築古の物件を再利用しようと思った場合、大幅なリフォームや再建築が必要になります。一方で、土地だけなら新築や駐車場利用がすぐに行えるため、買い手としても手を出しやすいでしょう。
新たに土地のみを活用できる
空き家の築年数が古い場合、賃貸利用などを行おうにも改修費用が必要であるにも関わらず、思ったように収益を得られるとは限りません。特に、物件が賃貸需要の少ないエリアに建っていると、そのリスクはより顕著になるでしょう。
そのようなケースでは、更地にして土地のみを活用した方が、利益に繋がる可能性があります。土地活用の選択肢としては「駐車場経営」「太陽光発電」「貸地」などがメジャーです。
空き家を解体する際の注意点
空き家解体にはいくつかメリットがある一方で、固定資産税の支払い額が増大したり、建物滅失登記を行う必要があったりします。
固定資産税が最大6倍になるリスクがある
通常の住宅同様に、空き家に課税される固定資産税は住宅用地に対する軽減税率が適用されます(※1)。軽減税率の計算方法は、以下の通りです。
空き家を解体すれば、固定資産税に対する軽減措置がなくなってしまいます。上図の通り、住宅用地に対する特例が消失すれば、固定資産税の課税額が最大で6倍になってしまいますので、解体前に把握しておかなければなりません。
建物滅失登記の手続きを自分で行わなければならない
空き家を解体すると、建物滅失登記も行う必要があります。建物滅失登記とは、登記簿から建物がなくなったことを示す、法務局への届出のことです。
建物滅失登記の届出には期限が設けられており、空き家の解体から一ヶ月のうちに行わなければ10万円以下の罰金が課せられる可能性があります。
空き家の解体費用はどのくらいかかる?
空き家の解体費用は「木造」「鉄骨造」「RC造」のような構造条件や、坪面積などによって変動します。
上記以外にも「老朽化が激しい」「アスベスト対策が必要」「特殊な物件で重機や機材の搬入ができない」などのケースでは追加予算が必要です。空き家で解体では、物件の条件に応じて必要費用に幅が生じることを踏まえておきましょう。
空き家の解体費用をなるべく抑える方法
空き家の解体時の工事費用を抑えるためには、以下のような方法が有効です。
- 家具や寝具などの残置物は処分しておく
- 解体費用が高額になる時期を避ける
- 複数の解体業者に見積もりを取る
- 自治体などの補助制度も活用する
家具や寝具などの残置物は処分しておく
空き家の中に家具や寝具などが残っている場合は、事前に処分をしておかないと解体時の廃棄物処理代が嵩む原因になります。自治体によっては、一度の申し込みで処分できる粗大ゴミの品数に制限がありますので、前もって確認しておきましょう。
高値で売却できる可能性は低いですが、リサイクルショップなどへの売却を利用するという選択肢もあります。
解体費用が高額になる時期を避ける
積雪の時期や、年末年度末の繁忙期は解体費用も膨らみがちです。雪が多く降ると除雪作業分の費用が上乗せされたり、繁忙期の工事依頼で休日出勤が増えれば人件費が上乗せされたりすることが理由となります。
特に、年度末は業者が請け負う公共工事も多くなりますので、空き家の解体はなるべく上半期に依頼するのがベターでしょう。
複数の解体業者に見積もりを取る
空き家の解体工事を行う際には、複数業者に見積もり相談することで相場感がわかり、悪質な業者に依頼してしまうリスクも減らせます。
極端に値段が低すぎる業者は、追加見積もりが多く発生する可能性も懸念されますので、あくまで相場感から逸脱しない解体業者に依頼をするのが賢明と言えます。
自治体などの補助制度も活用する
空き家問題は年々深刻になっており、さまざまな自治体が問題解決を促進するために補助制度を制定しています。これらの補助制度を活用すれば、空き家の解体費用を削減可能です。
例えば、東京都では「空き家利活用等区市町村支援事業(老朽空き家除却等)」など、空き家解体に利用可能な補助制度が都によって設けられています。これに加え、足立区や渋谷区などの各自治体単位でも、個別に補助制度を実施しています。
まとめ
空き家の定期的な維持管理が負担である場合、早い段階で解体して更地にしてしまう方が無駄な支出を抑えられます。空き家が築古物件である場合、土地のみの方が売却もスムーズに進むでしょう。
一方で、空き家の解体費用は物件の条件によって変動します。複数業者に見積もりを取ったり、補助制度などを活用したりして、なるべく解体費用が嵩まないようにしましょう。
参考:
※1 総務省,「固定資産税の概要」,https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_08.html,(2022/01/29)