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空き家の倉庫活用には収益性はある?倉庫活用のメリットや関連する法律について

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近年、日本で増加し続けている空き家は「維持負担」「地域の治安維持」「市場の活性化」の側面からみれば、売却しないのであれば何かしらの手段で利活用するのが望ましいといえます。

 

一方で、空き家を有効活用するためには、資金面の問題も踏まえれば、本格的な空き家活用が厳しいケースも多々あるでしょう。

 

本稿では、そのようなケースに検討できる空き家の「倉庫活用」について、収益性や実施にかかる注意点について論考します。

 

 

空き家の倉庫活用とは?

まず、空き家の「倉庫活用」の定義についてですが、ビジネスモデル的にはトランクルームが近くなっています。日本におけるトランクルームは近年増加傾向にあり、トランクルーム大手のキュラーズが調査した内容によると、2026年で1,000億円を突破すると見込まれています(1)。

 

日本では都市部への人口集中が進んでおり、一部エリアでは時価上昇による収入スペースの需要が高まっているのです。そのため、空き家を倉庫として活用する場合においても、一定の需要が期待できるでしょう。

 

すでに空き家の倉庫活用を行っている事業者は存在します。例えば、個人間の物置きシェアサービスの企画・開発・運用を行うモノオク株式会社は、空き家をはじめとする空きスペースを物置としてユーザーが利用できるサービスを展開しています(2)。

 

 空き家の倉庫活用ではどのくらいの収益が得られる?

空き家の倉庫活用にかかる収益性についてですが、前述のモノオクは東京都における1畳あたりの料金相場は6,000円の設定です。

 

さらに、トランクルーム市場の相場についてもみてみると、東京都新宿区のトランクルームの料金相場は、LIFULL HOME’Sで公開されている情報を参照すると「一帖 = 5,000〜15,000円」であるとわかります(3)。

 

これをもとに空き家を倉庫として活用すると仮定すれば、設定可能な賃料は一部屋ごとに「2,000〜6,000円」となるでしょう。

 

もちろん、物件の立地や設備、サービス内容によっても値段は変動しますが、設備投資がなされたトランクルーム市場における値段設定を鑑みれば妥当なラインといえます。

 

賃料3,000円で6部屋を倉庫として貸し出し、満室を維持できたと想定すると、その場合の年間収益は「3,000 × 6部屋 × 12ヶ月」で21万6,000円となります。

 

この金額は、固定資産税にも満たない可能性がありますので、人によっては「収益性がない」と感じられるはずです。

 

一方で、空き家を倉庫として活用する場合ならではのメリットもありますので、次章より解説します。

 

 

空き家を倉庫として活用するメリット

 

 初期費用を安く抑えられる

空き家の倉庫活用は、初期費用があまり必要ないという利点があります。賃貸活用やカフェなどの事業活用とは異なり、“物を置くだけ”であり、利用者のニーズに合わせた改修が不要なためです。

 

支払いの必要があるのは、固定資産税や維持管理費用などの空き家を所有していれば当たり前に発生する費用のほか、倉庫利用者を募るための広告宣伝費程度です。

 

 物件が築古であっても問題ない

利用者のニーズに合わせた改修が必要ないと説明しましたが、これは空き家が築古であればより大きなメリットとなります。耐震強度に難があったり、再建築不可であったりする場合は改修に多額の費用が必須です。

 

しかし、空き家を倉庫として活用するだけなら、そういった費用の支払いは必要ありません。

 

 賃貸需要の影響を受けづらい

もし、空き家を賃貸として貸し出して安定的な収益を得ようとしたとしても、物件が建っているエリアの賃貸需要次第では全く入居者がつかない可能性があります。一方で、倉庫に物を置きたいだけの人なら、立地はあまり気にしないと想定できます。

 

そのため、賃貸活用などに比べて得られる収益のポテンシャルは低くなるものの、安定収入に繋がる可能性もあるでしょう。

 

 

空き家の倉庫活用にかかる法令

空き家を倉庫として活用する場合は、いくつかの法令も念頭に置いておく必要があり、「借地借家法」「都市計画法」「倉庫業法」があげられます。それぞれの概要について、以下より解説します。

 

 借地借家法

「借地借家法」は空き家を倉庫として有料で貸し出す場合に適用される法律です(4)。

 

通常、個人間における物の貸し借りに関する民法上の扱いは、借りた側が不利になっていますが、そのままでは不動産の利用者が見つかりづらくなってしまいます。そのため、不動産にかかる事業に置いて借主をより強く保護する役割を担うのが借地借家法です。

 

借地借家法では「契約は必ず締結しなければならない」「貸し主は正当な理由なしに契約更新を拒めない」など、借り主側に配慮した規定がいくつもあります。

 

 都市計画法

空き家が建っているエリア次第では、都市計画法により利用用途の制限を受けるケースも存在します。一般的に住宅地は「市街化区域」「市街化調整区域」のいずれかに建築されています。

 

このうち、当該物件が市街化調整区域にある場合は、もともと倉庫として建てられた建物でない限り、第三者に倉庫として空き家を倉庫として誰かに貸し付けられません(5)

 

 倉庫業法

空き家を倉庫として活用する際には、倉庫業法に基づいた登録を事前に行っておく必要があります。この倉庫業により、誰でも利用者から依頼を受けた荷物を預かって収益化できてしまうことで、トラブルが多発しかねないリスクを低減できています(6)。

 

倉庫業法における登録を完了させるためには「倉庫管理主任者」を定めることに加え、登録申請書や倉庫の図面・見取り図、警備機器の配置図、建築確認申請書などの各種書類を用意しなければなりません。

 

 

空き家を倉庫として活用する場合の検討ポイント

 

 清掃・セキュリティに関する問題

空き家を倉庫として活用する場合、以下のような清掃・セキュリティにかかる費用が発生します。

 

  • 物件の修繕費(※破損している場合)
  • ハウスクリーニング費
  • ホームセキュリティ費

 

倉庫活用なら利用者のニーズを押さえる必要はないと前述しましたが、それでも物を保管する以上は物件を必要最低限の状態にしておくことは必要です。例えば、雨漏りがあれば天井を修繕したり、汚損が激しいならハウスクリーニングを実施したりです。

 

さらに、荷物が盗まれることがないよう、ホームセキュリティに関しても整えておくことが求められます。

 

 収益にかかる税金と確定申告

 

空き家の倉庫活用で収益を得ると、不動産所得税の支払い義務が生じます。それに加え、倉庫活用の年間収益が20万円を超えたケースでは確定申告も行う必要があることも把握しておきましょう。

 

不動産所得の確定申告については「青色申告」で行えば、所得税について最大65万円の控除を受けられるため、基本的にはこちらで行うのが賢明です。

 

 

 賠償責任保険料

空き家で預かっている荷物に何かしらの損害が発生した場合、責任は貸主である物件オーナーにおよびます。そういった場合に備えるためにも、賠償責任保険に加入しておくのがベターです。

 

賠償責任保険は単体ではなく、火災保険の特約として追加加入することも検討できます。

火災保険料についても、基本的に空き家では放火でもされない限り火災が発生しないため、一般的な家屋よりも安いプランで加入できますので、合わせて入っておいてもそこまで大きな負担にはなりません。

 

 

まとめ

空き家の倉庫活用は得られる収益のポテンシャルこそ低めではありますが、その分参入ハードルが高くないというメリットがあります。

 

「相続後しばらくは倉庫活用をして、余力ができたら他の空き家投資を行う」などの選択肢も採ることができ、先々まで見据えた“とりあえず”の活用方法としても十分検討できるでしょう。

 

空き家投資の概要については、同ブログの以下の記事でも紹介していますので、あわせてご参照ください。

 

空き家投資は本当に収益につながるのか?投資するメリットや懸念点について

 

 

参考:

※1 トランクルーム・キュラーズ,「2021トランクルーム市場 過去10年で倍増の670億円へと拡大」,https://www.quraz.com/info/pr/20211111.aspx,(2022/06/09)

※2 Monooq,https://japan.cnet.com/article/35167897/,(2022/06/09)

※3 LIFULL HOME’S,https://www.homes.co.jp/trunkroom/tokyo/,(2022/06/09)

※4 e-Gov 法令検索,「借地借家法」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=403AC0000000090,(2022/06/09)

※5 e-Gov 法令検索,「都市計画法」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=343AC0000000100,(2022/06/09)

※6 e-Gov 法令検索,「倉庫業法」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=331AC0000000121,(2022/06/09)

 

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