古くなってきた実家をリフォームをしたいと考えられた方の中には、はたしてどのような形にリフォームを行えばいいのかわからず、思い悩む人もいらっしゃるでしょう。そのような方のために、本稿では実家をリフォームする際の選択肢や、費用の相場感について解説します。
目次
実家を普通にリフォーム以外の選択肢
実家にただ住むのではなく、両親との同居など見据えた場合、求められるのは「バリアフリーリフォーム」「二世帯住宅化」などでしょう。
バリアフリーリフォーム
両親が高齢になってきた場合は、同居するしないに関わらず、安全に生活を送るためのバリアフリーリフォームが必要となります。
玄関や階段などにある段差を解消したり、トイレ・浴室・廊下などに手すりを設置したりといった工事です。浴室にはヒートショック防止を目的としてヒーターが設置されるケースも多々あります。
二世帯住宅化
両親世代と共同で暮らすことを目的とした二世帯住宅化に当たっては、それぞれが快適に暮らすために、別々の玄関やキッチン、居間を用意し、居住空間を分けるのが通例です。
二世帯住宅にすれば、それぞれ別の住宅で暮らす場合に比べ光熱費や家屋の維持費などを抑えやすくなります。
さらに、互いのプライバシーは尊重しつつ、両親世代をサポートしたり、あるいは逆に両親世代から家事・育児の面で助けてもらったりもしやすいでしょう。
親名義のままリフォームをすると損?
贈与税が課税される
親名義のまま、自己資金で実家をリフォームしてしまうと、子供から親への贈与が発生したとみなされ、名義人である親に対し贈与税が課税されます。贈与税は毎年1月1日〜12月31日の期間に受けた贈与の額に応じた課税額を支払うことになる税金です。
基礎控除額は110万円となっていますので、この金額を超える範囲で実家をリフォームした場合、以下のように贈与したとみなされた金額に応じた税率・控除額で課税が発生します(※1)。
リフォームのローン減税が適用されない
リフォーム費用が高額な場合、ローンを組んで金融機関からの融資を受けるケースも多々あると思われますが、両親が高齢な場合はローンを利用できません。
そのため、実家のリフォームでローンを申し込むのは子供世代になり、その場合ローンの控除を受けるための要件を満たせない可能性が懸念されます。
例えば、住宅ローン減税の対象となるためには、自分の名義かつ居住している家のリフォームであることが求められます。
実家のリフォームをする際の費用相場
バリアフリー化リフォーム
前述の通り、高齢になった両親が安心・安全に暮らすためには、玄関や床などの段差を解消したり、トイレや浴槽などに手すりを設置するといったバリアフリー化のリフォームが必須となります。
介護が必要になると予想される場合には、実家の各スペースをより広く改装する必要もあるでしょう。車椅子や手押し車を住居内で使用するためには、ドアを開閉しやすいよう開き戸から引き戸に変更するといった改築も求められます。
<バリアフリーリフォームの相場感>
- 段差の解消…1〜28万円
- 手すり設置(水まわり・玄関・廊下など)…1〜18万円/箇所
- 室内ドアを引き戸に変更…3〜30万円
- 廊下の幅を広げる…40〜100万円
- 浴室の床をすべりにくい素材に変更…4〜20万円
- 浴室スペースの拡張…15〜250万円(増築工事も伴う場合などは高額)
- トイレ室内スペースの拡張…10〜40万円
多世帯同居のためのリフォーム
記事前半部分でも解説した2世帯以上での同居に合わせたリフォームを行う場合は、各世帯のプライベート空間を確保するための改修が行われるケースも多々あります。
<多世帯同居のためのリフォームの相場感>
- キッチンの増設…30〜170万円
- 洗面台(洗面所)の増設 15〜60万円
- 浴室の増設…75〜250万円
- トイレの増設…40〜100万円
ヒートショック対策
実家が築古物件などであれば、かねてより「隙間風などで家の中が寒い」といった悩みを抱えているケースもあるかもしれません。
そういった住宅をリフォームする場合は、冬場など「浴室暖房」「トイレ・洗面所などへのヒーター設置」といったヒートショック対策を実施すれば、快適性がより向上します。
<ヒートショック対策の相場感>
- 洗面所…5〜8万円
- 浴室暖房の設置…10〜40万円
- トイレへの小型暖房機の設置 トイレ…5〜6万円
断熱リフォーム
実家が「夏は暑く、冬は寒い」といった状況であるなら、ヒートショック対策と合わせて断熱リフォームも選択肢に入ります。
「壁や天井、床下に断熱材を追加する」「内窓を追加する」などの断熱処理を施せば、こういった悩みからも開放されるでしょう。
<断熱リフォームの相場感>
- 壁・屋根の断熱化…~3万円/㎡
- 天井・床下の断熱化…〜1万円/㎡
- 内窓の追加…8~30万円/箇所
水回り設備の一新
浴室やトイレなどの水回りの設備は、一般的に10〜20年で取り替える必要があります。浴室・トイレのユニットを丸ごと交換する場合は、壁や床材なども同時に取り替えることになるでしょう。
<水回りを一新する際の相場感>
- キッチンの交換…50〜150万円
- 洗面台(洗面所)の全体交換…10〜50万円
- 浴室をユニットバスに変更…65〜150万円
- トイレを和式から洋式に変更…15〜60万円
実家のリフォームで活用できる費用削減方法
住宅ローン減税
住宅ローン減税は、10年以上返済期間で組まれた住宅ローンがある場合に利用可能で、年末のローン残高の1%について、所得税から控除できる制度です。対象リフォームは、バリアフリーや省エネ化、耐震などとなります。
ローン型減税
5年以上の返済期間のリフォームローンを利用しているケースでは、指定の控除対象限度額の2%(+α)が所得税から控除されるローン型減税も選択肢に入ります。
バリアフリーや省エネ、多世代同居用の改修、長期優良住宅化などを行う際に利用可能です。
投資型減税
投資型減税は、工事費用相当額の10%について所得税から控除できる仕組みで、対象工事はバリアフリーや省エネ、耐震、多世代同居用の改修、長期優良住宅化などとなります。
固定資産税の軽減
バリアフリー化や省エネ、耐震、長期優良住宅化を利用する場合、実家にかかる固定資産税の1/3〜2/3を1年度分軽減できる制度です(条件次第で2〜3年度分も可)。
贈与税の非課税措置
親や祖父母から実家の贈与を受けたケースにおいては、条件を満たせば贈与税の非課税措置が実施されます。対象となるリフォームはバリアフリー化や省エネ化、耐震などです。
まとめ
実家のリフォームを実施する場合、両親と同居したり、介護したりすることを見据えればバリアフリーリフォームや二世帯住宅化が選択肢となります。
その他にも、快適に暮らしていくためのリフォームの選択肢は多々ありますが、「あれもこれも」となれば、必要費用は大幅に膨れ上がってしまいます。実家をリフォームする場合は必要な工事について慎重に検討しつつ、各種補助制度も活用しましょう。
参考:
※1 国税庁,「贈与税の計算と税率(暦年課税)」,https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm,(2022/02/28)