実家を相続したものの自分で住む予定がなく、そのままでの売却も難しいケースなどでは解体を検討される方もいらっしゃるでしょう。しかし、そのような場合には費用面に関して不安が生じるはずです。
そこで本稿では、実家の解体工事を行った場合の費用ついて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
実家の解体工事にかかる費用
解体費用の見積もり方法
まず実家の解体に必要な費用ですが、実家が戸建て物件であると想定した場合の相場感についてはおおよそ以下の相場感となります。
もちろん、上記の費用は実家の所在地や築年数などによって変動します。さらに、庭木などが残っている場合は、それらを処理するための資金も必要です。
実家を解体する際の注意点
固定資産税が上昇する
実家に対して課税される固定資産税は、住宅用地に対する軽減税率が適用されているケースが一般的です。通常、固定資産税の納税額は「固定資産税評価額 × 1.4%(標準税率)」で算出されますが、軽減税率が適用された場合は以下のように税率が変わります(※2)。
実家を解体し、更地にしてしまうと上記の軽減措置は適用されなくなります。その場合、固定資産税の支払額が最悪6倍になってしまう点については、あらかじめ留意しておかなければなりません。
解体後は建物滅失登記を行う必要がある
建物滅失登記とは、登記簿から該当する物件がなくなったことを法務局へ登記する手続きを指します。滅失登記を行わなければ、再建築ができなかったり、固定資産税を余分に支払ったりするリスクが発生します。
建物滅失登記は、以下の流れで行うのが通例です。
- 法務局で建物の登記簿謄本を取得する
- 建物滅失登記申請書を作成する
- 解体業者から登記事項証明書や印鑑証明書を受け取る
- 法務局で登記申請する
なお、建物滅失登記は実家の解体から一ヶ月のうちに行わなければなりません。
再建築ができない場合がある
本来、日本の建築物は「接道幅2m以上」などの建築基準法に沿った形で建てられている必要がありますが、同法令が現在の要件となる以前に建てられた築古の物件などはその限りではありません。このような建築基準法を逸脱した物件は再建築不可物件と言われ、一度家屋部分を取り壊すと再建築ができなくなります(※3)。
そのため、実家を解体する目的が、更地にした土地に新築住宅を建てることであるなら、実家が再建築可能物件であるかどうか事前に確認しておきましょう。
なお、接道幅を建築基準法の要件を満たす状態にするセットバックの実施など、再建築不可の物件を再び建築可能な状態にするための取り組みはいくつか存在しますので、それらも合わせて検討しましょう。
実家の解体費用をなるべく抑える方法
補助制度を活用する
自治体によっては、実家の解体工事に対して利用可能な補助制度を実施しているケースがあります。解体にかかる費用の助成を受けるためには、「特定空き家に指定されている」「地元の事業者に解体を依頼する」などの要件が設けられていますので、あらかじめ実家の所在地を管轄する自治体のホームページなどを参照しましょう。
場合によっては空き家解体ローンも視野に入れる
「解体費用を捻出できない」「自治体の補助制度も利用できない」といったケースでは、空き家解体ローンの活用も視野に入ります。
空き家解体ローンとはその他のローンと同じく、金融機関の審査を受け、それに通れば融資を受けることが可能です。
空き家を解体した後の更地の売却益をローン返済に充てる予定であっても、売却がスムーズに進まない場合は自己資金で返済する必要がある点には留意しなければなりません。
複数の業者に相見積もりをとる
実家の解体工事と言っても、依頼する事業者によって見積もり金額が異なるケースは多々あります。これは、事業者ごとに異なる利益率を設定していたり、現場までの移動距離が遠かったりするためです。
そのため、なるべく費用を抑えるためにも複数業者に相見積もりを取るのが望ましいと言えます。
解体の時期に注意する
実家を解体する時期によっては、解体費用が多く必要になる可能性があります。例えば、積雪の時期や、年末年度末の繁忙期などです。
雪が積もった場合は除雪作業を行わなければなりませんし、事業者が多くの公共工事を請け負う年末年始の繁忙期などに解体工事が重なり休日出勤が増えれば、人件費が余分に加算されます。
実家の解体ではご近所トラブルにも注意しよう
どれだけ良い業者に依頼できたとしても、解体工事では騒音や振動、粉塵が発生してしまいます。そうなると、実家の近隣住民にストレスを与えてしまい、トラブルに繋がりかねません。
実家の解体工事にあたって、近隣住民と発生すると想定されるトラブルとしては以下のようなものがあります。
- 騒音がストレスに繋がる
- 事前に工事について聞かされていなかった
- 解体工事や粉塵などで洗濯物が汚れるなどの被害があった
- 作業員のマナーが悪かった
トラブルが発生した場合であっても、話し合いで和解に繋がれば良いのですが、そうでない場合は最悪民事裁判に繋がってしまう可能性もあるでしょう。
そのため、実家を解体する際には、事前に近隣住民の理解を求めるよう努めることが求められます。例えば、工事前に挨拶回りをしたり、手土産を持参したりなどです。
これにより、近隣住民に対しても丁寧な印象を与えられますので、余計なトラブルに発展するリスクを低減し、解体工事をより終えられるでしょう。
まとめ
実家を解体する際に発生する費用は、家屋の構造や築年数によって変動しますが、おおよそ100万円前後からの資金が必要です。実家を解体してしまうと、固定資産税の支払額が増えてしまったり、再建築ができなかったりするケースもありますので、その点にも留意しなければなりません。
実家の解体は各自治体の補助制度も利用しつつ、近隣住民にも配慮した上で行うようにしましょう。
参考:
※1 国土交通省,「建築関係法の概要」,https://www.mlit.go.jp/common/000134703.pdf,(2022/02/28)
※2 総務省,「固定資産税の概要」,https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_08.html,(2022/02/28)
※3 国土交通省,「建築関係法の概要」,https://www.mlit.go.jp/common/000134703.pdf,(2022/02/28)