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空き家を相続放棄した場合どうなる?

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実家などの空き家を相続することになったものの、住む予定がなく、資産的な価値も見込めない場合、相続放棄を検討する方も多いのではないでしょうか。一方で、相続放棄をしたからといって、空き家に関する責任を全て放棄できる訳ではありません。

 

今回は、空き家を相続放棄する場合の留意事項について解説しますので、ぜひ参考にしてください。

 

そもそも相続放棄とはどんな手続き?

相続放棄とは、空き家をはじめとする全ての相続資産の権利を放棄し、法的に相続人から退くことを指します。相続放棄を行うためには家庭裁判所へ申述を提出する必要があり、受理されると相続放棄が成立します。

 

相続放棄可能な期間には制限があり、相続が発生したことを相続人が知ってから3ヶ月以内に行う必要があります(1)。相続放棄を行えば、空き家を相続する可能性はなくなりますので、他の相続人との遺産分割協議への参加義務もありません。

 

 

相続放棄しても管理責任が残る

相続放棄を行えば、空き家の所有者になることはありませんが、一定期間は空き家の管理義務が残る点には留意しましょう。

 

 どんな管理責任義務が残るのか?

実際に、相続放棄を行えば空き家に係る固定資産税・都市計画税の支払いは必要なくなります。しかし、相続放棄をしたとしても、空き家を管理し、状態を維持する義務まではなくなりません。これは全ての相続人が相続放棄をした場合も同様です。

 

もし、空き家が“管理者不在”の状態となり、そのまま放置されれば、老朽化が進み倒壊のリスクが高まるため非常に危険です。このような状態を避けるため、民法第940条において「相続人全員が相続放棄をした場合。元相続人に次の所有者が決まるまで、空き家を自分の財産に対するものと同一の注意を払って“保存”する義務が生じる」と定められています(2)。

 

なお、従来の民法940条では「保存」ではなく「管理を継続しなければならない」とされていました。しかし、相続放棄をしたにも関わらず、元相続人が過剰な管理負担を強いられるケースがあったことが問題視され、令和3年に現在の形に改正されています(3)。

 

 管理責任義務が残る期間

空き家の管理義務が続く期間は、空き家を他の相続人に引き渡すまで、あるいは「相続財産管理人」が決定するまでの間です。

 

相続財産管理人とは、相続人不在の財産に対して被相続人の債権者などに借金の支払いのような清算を行い、精算後も残った財産を国庫に帰属させる人物です。

 

他の相続人や相続財産管理人への空き家の引き渡しまで完了してはじめて、元相続人から空き家の管理義務はなくなります。

 

 空き家の管理を怠った場合どうなる?

空き家の管理を怠り、放置を続けると空き家はたちまち老朽化が進み、倒壊や犯罪のターゲットになるリスクが高まります。空き家の壁や屋根が崩れたり、倒壊したりすることで通行人や近隣住民に被害が及べば、元相続人は管理責任を問われ、損害賠償請求される可能性があります。

 

たとえ物理的な被害はなかったとしても、ボロボロになった空き家は景観を損う原因となり、放火や不法侵入などの犯罪の温床になるリスクも高まるため、周辺地域の治安悪化に繋がります。そうなれば、周辺住民から苦情も寄せられるでしょう。

 

 

相続放棄の際の注意点

相続放棄を行う際には、「他の相続財産の権利を全て放棄しなければならない」「相続財産管理人への報酬が必要になる」などのデメリットがある点も、踏まえておきましょう。

 

 相続財産はすべて放棄しなければならない

相続放棄では、空き家の相続のみを放棄し、その他の財産を相続することはできません。

 

さらに、引き渡しが完了するまでの間に放棄した財産に変更を加えてしまえば、その時点で相続を行ったと見なされる可能性もあります。空き家の売却や贈与はもちろんのこと、増改築や解体も手を加えたと判断され、相続放棄が出来なくなります。

 

そのような状態を避けるためにも、空き家に手を加える範囲は保存のための維持・管理程度に留めておきましょう。

 

 相続財産管理人の専任では費用がかかるケースもある

前述の通り、相続人全員が相続放棄を行った場合、相続財産管理人の専任が必要になります。相続財産管理人に関しては、公平性の観点から家庭裁判所が地域の弁護士を専任するケースも多々あります。

 

相続財産管理人の選任では「収入印紙800円」「官報公告料3775円」に加え、予納金の準備が必要です。予納金とは相続財産管理人に支払う報酬で、約20万円〜100万円ほどが相場となっています。

 

予納金については、放棄された財産で賄うのが一般的ですが、金額が足りない場合は別途支払わなければなりません。

 

 

相続放棄以外で空き家を手放す方法

相続放棄をしたとしても。相続財産管理人へ支払う報酬などで結局支出は発生してしまいます。そのため、いったん相続してから、空き家の売却や寄付などを行うのも選択肢のひとつです。

 

 いったん相続してから売却する

空き家が築古物件であったとしても、売却できる可能性は十分にあります。例えば、“戸建て”の売却ではなく、“古家付き土地”として売りに出せば、空き家の解体の必要がなくなりますので、時間や費用を節約できます。

 

それでも買い手が見つからないと予想される場合には、空き家を解体し、更地にして土地のみ売却しましょう。解体費用こそかかってしまいますが、土地のみであれば比較的短期で買い手を見つけられるでしょう。

 

 国や地方自治体へ寄付をする

レアケースとはなりますが、国や地方自治体が空き家の寄付を受け入れてくれる場合もあります。自治体の調査によって、物件そのものに歴史的価値がある、あるいは公共施設として有効活用できそうなどと判断されれば寄贈が可能です。

まとめ

活用予定のない空き家は、固定資産税などの支出が嵩むだけであるため、相続放棄を行うのも手段のひとつです。ただし、相続放棄を行ったとしても管理責任が発生し続ける点には留意しなければなりません。

 

さらに、相続人全員が相続放棄を行った場合は相続財産管理人を選び、報酬を支払う必要もあります。相続放棄をするにあたって、相続後の売却なども視野に入れ、総合的に判断しましょう。

 

 

参考:

※1 裁判所,「相続の承認又は放棄の期間の伸長」,https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_25/index.html,(2022/01/29)

※2 e-Gov 法令検索,「民法」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089,(2022/01/29)

※3 土地総研リサーチ・メモ,「令和 3 年民法改正の概要と論点~財産管理制度 その1(所有者不明土地管理制度)」,https://www.lij.jp/news/research_memo/20211029_1.pdf,(2022/01/29)

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