遺産相続などで実家を手に入れたものの、家屋部分が築古で有効活用が難しい場合は「なんとかして土地のみでも運用したい」と考えられる人もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回の記事では、そのような方のために実家に存在する土地部分を活用する際の方法について解説します。
目次
実家の土地のみを活用する6つの手法
自己建設方式
自己建設方式とは、土地活用の計画立案から建築作業の発注、その後の運営まで一気通貫で土地所有者が行う方式です。この方式ですと、土地活用が成功した際の収益は大きい一方、事業として成立させるための専門知識・経験が求められます。
事業受託方式
事業受託方式は前述の土地運用に係る調査や計画、建築運用などをデベロッパーに委託する方式となります。規模にもよりますが、土地運用の方法としてはメジャーな手法で、オーナー側に事業経験が必要ない点が利点となります。その分デベロッパーに対し報酬を支払う必要があるため、手残りの利益は少なくなりがちです。
建設協力金方式
事業受託方式を採る際に、建設後の建物にテナントが決まっている場合に採用されやすいのが建設協力金方式となります。入居予定のテナントが貸付を行なってくれる土地運用の方式であり、建設協力金で工事費用を賄えるため、金融機関からの融資を受ける必要はありません。
代表例としては、コンビニエンスストア・ファミリーレストランなどが挙げられます。建設協力金の返済分は、毎月テナントから支払われる家賃から差し引かれます。
土地信託方式
土地信託とは、信頼できる人物・機関に土地の管理・運用を委託する方式です。土地信託では、土地を信託銀行に託した上で、運用を委任するのが通例となります。
信託銀行側は運用を委託された土地に投資用物件を建築し、そこから得られる収益から信託銀行側の報酬分を差し引いた配当金をオーナーに支払います。
なお、信託方式において財産オーナーは「委託者」と呼ばれ、運用を引き受ける側は「受託者」、配当を受け取る人物を「受益者」とそれぞれ呼称します。
土地信託方式を行うことができる不動産には、家賃が高いエリアや広さなどの立地条件が求められます。
等価交換方式
等価交換とは、土地所有者とデベロッパーがそれぞれ資産を持ち寄って行う運用方式です。
例えば、オーナーが土地を提供し、デベロッパーが自己資金で収益物件などを建築するといった形を採ります。
等価交換では、土地所有者とデベロッパーがそれぞれ提供した資産に応じた割合分の権利を「持ち分」として所有することになり、土地運用で得られた収益もその権利分に応じた割合で分割します。
この方法なら自己資金なしで収益物件を手に入れることができますが、等価交換方式が採用されるのは賃貸需要が高く、なおかつ広い面積の土地を有している場合がほとんどです。
定期借地権方式
借地権とは建物を建てるために地代を払って土地を借りる権利のことです。なかでも定期借地権は契約期間が定められている借地権であり、契約期間が満了となると土地の所有権は自動的に土地オーナーに戻ってきます。
定期借地権には以下の3種類があります。
- 一般定期借地権…契約期間50年以上の借地権
- 事業用定期借地権…契約期間10年以上50年未満の借地権
- 建物譲渡特約付借地権…契約期間30年以上の借地権
上記の契約方法はそれぞれ契約内容や契約満了時の対応の措置などが異なります。
ただし、定期借地権は非常に長い期間土地を貸し出すことになるため、「数年後には売却したい」などと考える場合には不向きな運用方法です。
実家の土地活用の事例
駐車場
土地の駐車場活用は、新規に建物を建てる必要がなく短期間で始められるため最も難易度の低い活用方法のひとつです。建物を建てない、撤退する際に解体費用がかからない点もメリットでしょう。
周辺エリアの交通量が多いなら時間貸し形式のコインパーキング経営を行い、それ以外のエリアでは月極スタイルでの貸し出しが望ましいでしょう。
資材置き場・トランクルーム
駐車場ではなく、建築業者などの資材置き場として土地を貸し出したり、コンテナを設置しトランクルーム経営を行ったりする、所謂物置的な運用方法も比較的少ない労力で行うことができます。
いずれもそれほど得られる収益は大きくありませんが、駐車場経営を同じく撤退しやすく、事業経験がなくとも行える点がメリットです。
太陽光発電
所有している土地に太陽光発電設備を設置し、売電を行なって収益を得る選択肢もあります。太陽光発電の設置にあたっては、自治体によっては助成制度を利用できます。
ただし、近年は売電価格は減少傾向である点に加え、安定した収益を得るためには広い面積が必要なため、農地などの広い土地向きの活用方法である点には留意しましょう。
事業用借地
企業などに事業用の借地として貸し出し、賃料を得る手法もあります。前述した資材置き場としての活用も、土地の用途が事業用であればこちらに含まれるでしょう。
駅や商業地に近いエリアの土地を所有しているのであれば、利用したいという企業もスムーズに見つけられ、賃料も高く設定できると予想されます。この方法であれば、前述の建設協力金方式の採用ができます。
アパート・集合住宅
賃貸需要の高いエリアなら、アパートや集合住宅を建築して賃貸経営を行う手法も視野に入ります。好条件で入居者を見つけることができれば、長期的に安定した収益を期待できます。
ただし、物件の建築には多額の資金が必要であり、家賃収入が少なくなる空室時にはローンの返済に苦慮するリスクがあります。
介護施設
日本は現在少子高齢国家にあり、高齢者用の介護施設の需要も高まっています。介護施設のような社会福祉施設の建設にあたっては国の助成制度を利用することも可能で、厚生労働省により「地域介護・福祉空間整備等交付金」「次世代育成支援対策施設整備費交付金」などが実施されています(※1)。
土地活用が収益に繋がらない場合は売却しよう
土地活用は適切に行えば安定的な収益を得られる一方で、失敗すれば多額の負債を抱えるリスクもあります。そのため、適切な活用方法が見つからないのであれば、無理に運用するのではなく、売却してしまうのも手段のひとつです。
人口が減少傾向にある日本においては、都心などのごく一部のエリアを除き、長期的に見れば不動産価格は減少傾向にあります。そのため、無駄に遊ばせておくよりは、早い段階で売却した方が賢明と言えます。
まとめ
相続などにより手に入れた土地は、そのまま放置しておけば固定資産税の支払いが生じるだけのマイナス資産ですが、適切な方法で土地活用を行えば安定した収益を得ることができます。
実家の土地の活用方法については、所有している土地面積や当該エリアの需要などを鑑み、総合的に判断しましょう。
参考:
※1 厚生労働省,「社会福祉施設の整備・運営」,https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/shakai-fukushi-shisetsu1/index.html,(2022/02/22)