居住者がいなくなった空き家を所有しているものの、築古の物件であるため自分で住んだり、貸し出したりといった活用ができずにお悩みの方は多いのではないでしょうか。そのような問題の解決方法のひとつが空き家リフォームです。
本稿では、空き家をリフォームするメリットデメリットに加え、リフォームに必要な費用に関して解説します。
目次
空き家リフォームのメリット
空き家は放置し続けるのではなく、リフォームを行うことで「資産価値の上昇」「各種リスクの低減」といったメリットが得られます。
資産価値の上昇
定期的に管理が行われていない空き家は非常に傷んでしまっているケースが多々存在します。窓を開けて空気の入れ替えがされなければ内部に湿気が溜まってしまい、高温多湿の状態になるとカビや虫が発生し、木造建築の場合は急速に劣化が進むためです。
このような状態に陥った空き家をリフォームを実施すれば、資産価値の向上に繋がります。
自分で住むのはもちろん、賃貸利用や売却を行う際にも入居者や買主が見つかりやすくなります。
見た目や設備の新しさだけでなく、耐震・耐熱・防湿対策を行うことで、安全性も確保できるでしょう。
各種リスクの低減
古い状態の空き家を放置し続けることは、さまざまな要因から非常にリスキーな行為です。
例えば、前述のように老朽化した空き家は倒壊する危険性や、周囲の景観を損なってしまいます。
それだけでなく、放火や不法侵入といった犯罪の温床になる危険性もあり、もしも空き家放置が原因で第三者に損害が及んだ場合、空き家の所有者に賠償責任が発生するケースもあります。
2015年5月から「空家等対策の推進に関する特別措置法(※1)」が施行され、周囲に危険を及ぼし得る空き家は行政によって「特定空き家」に指定されるようになりました。特定空き家に指定されると、固定資産税の支払額が最悪6倍になってしまいます。
空き家リフォームのデメリット
空き家リフォームの最大のデメリットと言えば、費用が嵩みがちであるという点でしょう。1981年以前に建てられた住宅ですと、旧耐震基準を元に設計されているため基礎や骨組みから補強することになり、予算はさらに必要となります。
空き家リフォームに係る費用を、賃貸利用や売却などで回収しようと思ったとしても「リフォームの実施→借主or買い手探し」との手順を踏まなければならないため、それなりの時間がかかる点もネックです。
リフォームした空き家の有効活用方法
空き家のリフォーム後は自分や家族が住む以外にも、以下のような活用方法を検討できます。
- 賃貸物件
- 民泊
- 売却
賃貸物件
リフォームした空き家を賃貸物件として活用し、入居者から家賃を受け取ることができれば毎月安定した副収入を得ることができます。家賃収入はローンの返済(リフォーム時に利用した場合)や固定資産税、物件の維持費などの各種諸経費を差し引いた分の金額です。
管理負担は増しますが、物件をシェアハウスとして活用するという選択肢もあります。物件が広く、個室が多い場合などは、複数の入居者に貸し出すシェアハウスとしての活用も十分可能でしょう。
空き家を賃貸利用する場合は、入居者が見つからないリスクもあります。それを避けるためにも、事前に物件所在地の賃貸需要や、周辺の競合物件に関してリサーチを行うことが必要です。
民泊
平成30年に施行された「住宅宿泊事業法(民泊新法)」により、個人が民泊を始める敷居が大幅に下がりました(※2)。キッチンや浴室、トイレなどが備え付けられた住宅に消化器や火災検知器などの消防設備を設置すれば、民泊利用が可能です。
民泊運営では宿泊者に対するサービス提供も含めた管理業務が義務となりますが、そちらに関しては管理会社に委託するという選択肢もあります。
ただし、住宅宿泊事業法では年間の営業日数が180日までに制限されているため、年間を通して運営できない点には留意しなければなりません。
さらには、昨今は新型コロナウイルスの影響で観光需要が非常に変動しやすい状況となっていることも踏まえると賃貸活用以上に安定した収益を得るのは難しいと言えるでしょう。
売却
空き家を自分で活用する予定がないのであれば、売却してしまうのも有効な選択肢です。前述のように、築古の戸建てのままだと買い手探しが難航する可能性がありますが、リフォームを行い資産価値を向上させた状態であればスムーズに売却できる確率が高まります。
空き家リフォームにかかる費用相場
空き家リフォームは、物件の状態や広さ、リフォーム内容の状態や広さによって変動しますが、おおよそ500〜600万円の予算が必要です。リノベーションを行う場合は、さらにプラスで数百万円の資金が求められます。
戸建て住宅の各所リフォームで必要になる予算の目安としては以下の通りです。
※上記費用感は複数社の公開情報 を元にURI・KAI作成。
上記以外にも、玄関や寝室など、リフォーム箇所に応じて細かく値段が変わりますので、詳しくは専門業者へ問い合わせましょう。
耐震・省エネリフォームなら節税に繋がる可能性もある
もし空き家に所有者本人が居住する目的でリフォームを行う場合、住宅リフォームに係る減税制度を利用できます(※3)。
控除が適用されるかどうかはリフォームの種類によって決まり、控除可能性のある税金についてはそれぞれ以下の通りです。
※1 1号工事〜3号工事に該当する場合に限る。
※2 1号工事〜3号工事、4号工事、6号工事に該当する場合に限る。
空き家リフォームで活用できる補助制度
空き家のリフォーム内容次第では、さまざまな補助制度を利用できる可能性があります。以下より、代表的なものをピックアップして解説します。
長期優良住宅化リフォーム推進事業
「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は、耐震性の補強や子育てのための環境整備など、住宅の性能を向上させる目的のリフォームで利用できる補助金です(※4)。補助率は補助対象経費の1/3で、補助限度額はリフォーム後の住宅性能に応じて3つの限度額が設定されています。
※( )内は、三世代同居対応改修工事を実施する場合、若者・子育て世帯または既存住宅の購入者が改修工事を実施する場合。
次世代省エネ建材支援事業
「次世代省エネ建材支援事業」は既存住宅の省エネ改修を目的とした補助金です(※5)。断熱材一体型のパネルや潜熱蓄熱建材、調湿建材などを使ったリフォームで利用できます。
断熱材や高性能窓・玄関ドア、調湿建材も、同時に施工すれば補助対象になります。
令和3年度においては「補助率は補助対象経費の1/2以内」「補助金額の上限は一戸に月300万円以内」との上限で、11月1日から30日まで公募が行われました。
地方自治体からの補助制度
上記の補助制度以外にも、各自治体ごとに空き家を活用したい人向けの補助金や支援制度が設けられています。交付の要件については、それぞれの自治体のホームページや広報誌などで確認できますので、積極的に問い合わせを行いましょう。
まとめ
空き家はそのまま放置すればどんどん老朽化してしまいますので、リフォームを実施することで資産価値の向上や各種リスクの低減が望めます。リフォームした空き家であれば、自分で住む以外にも、賃貸利用やシェアハウス、売却などの選択が採りやすいでしょう。
空き家のリフォームでは、各種補助制度を利用できる可能性もありますので、概要を把握し、有効活用しましょう。
参考:
※1 国土交通省住宅局住宅総合整備課,「空家等対策特別措置法について」,https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001385948.pdf,(2022/01/14)
※2 国土交通省,「住宅宿泊事業法(民泊新法)とは?」,https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/overview/minpaku/law1.html,(2022/01/14)
※3 住宅リフォーム推進協議会,「リフォームの減税制度」,https://www.j-reform.com/zeisei/,(2022/01/14)
※4 建築研究所,「長期優良住宅化リフォーム推進事業」,https://www.kenken.go.jp/chouki_r/,(2022/01/14)
※5 環境共創イニシアチブ,「令和3年度 次世代省エネ建材の実証支援事業」,https://sii.or.jp/meti_material03/overview.html,(2022/01/)