相続した空き家を利活用する予定がない場合、固定資産税や維持管理の負担があるため早期売却を検討するケースは多く存在するでしょう。空き家の売却を考えた際に、なるべく多く売却益を得るためには空き家の相場について把握しておく必要があります。
本稿では、空き家を売却する際の相場感を把握するために必要な考え方について論考しますので、ぜひお役立てください。
目次
空き家の売却相場に関する考え方
空き家を売却する場合の売値に影響を与える要素は様々存在しますが、代表的なものとしては「築年数」「立地条件(=賃貸需要)」などが挙げられます。近年は空き家のような戸建て物件は、市場における需要にほぼ変動がないため、まずはこれらの条件を勘案するのが有効です。
たとえば、国土交通省が2021年に発表した情報を参照すると、日本における住宅用建物の価格は、以下のように推移しているとわかります。
出典:「不動産価格指数(国土交通省)」
上記のとおり、マンションの相場が右肩上がりであるにも関わらず、戸建て住宅の相場は一定値を保っています。つまり、空き家を売却する際には、「築年数」「立地」の条件が近い物件の売却価格を参照すれば、自ずとおおよその値段がわかるのです。
築年数ごとにみる空き家の相場観
空き家のような戸建て物件の売却時の相場は、築年数の影響を大きく受けます。たとえば、「公益財団法人 東日本不動産流通機構(通称:東日本レインズ)」が公開している情報を見てみると、首都圏の戸建て物件の売却相場は築年数によって以下のように下がっているとわかります(※1)。
以下より、各築年数における売却価格の傾向について解説します。
築5年未満
建築から5年未満の築浅の物件は市場における希少性が高く、高額での売却も期待できるでしょう。前述の東日本レインズの情報によると、首都圏における築年数5年未満の物件の成約数は、全体の10%以下とのことです。
しかしながら、築浅の状態で空き家状態になっている物件は極めて珍しいため、空き家問題に悩んでいる方はあくまで参考程度にとどめておきましょう。
築5年~築15年
東日本レインズによると、築5年〜10年未満の物件は取引量が多く、買い手が見つかりやすいラインとなっています。購入希望者側からしても、この程度の築年数なら物件価値が高いため、長期の住宅ローンが組みやすい点も購入を後押しするポイントです。
築10年を超えると、若干売却相場の下がり幅が大きくなっていきますが、それでもまだ築浅の物件と遜色ない価格での売却が望めます。
築15年~築30年
日本において、戸建て物件の耐用年数は下記のように定められています。
- 木骨モルタル…20年
- 木造・合成樹脂造…22年
- れんが造・石造・ブロック造…38年
- 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート…47年
上記のとおり、木造建築の物件は20年で耐用年数がきれてしまいます。この場合、築20年を境にして売却相場は著しく下がってしまうでしょう。
そのため、耐用年数切れ間近の空き家を所有しているなら、年数が経過する前に売却した方がより高値で手放しやすいと言えます。
築30年以上
東日本レインズの公開情報によると、首都圏で戸建て物件を売却した際の築年数は平均21年とのことです。つまり、この時期を超えると売却が難しくなってしまうとも捉えられます。
上手の相場観を見てみても、築30年以上の物件の売却価格は、築浅のものと比較して半額程度になってしまっています。
空き家の売却相場を調べる方法
築年数に関する相場観も踏まえつつ、立地条件を考慮したうえで空き家の売却価格の相場を調べる方法としては、以下のようなものがあります。
- 不動産ポータルサイト
- REINS(レインズ)
- 土地情報総合システム
不動産ポータルサイト
出典:「LIFULL HOME’S」
「LIFULL HOME’S」「SUUMO」「at home」といった不動産ポータルサイトには、賃貸物件だけでなく売りに出されている物件情報も掲載されています。
そこで、所有している空き家と似た立地条件、築年数の物件情報を参照すれば、売却時の
相場観についても把握しやすいでしょう。
REINS(レインズ)
出典:「Real Estate Information Network System」
「REINS(レインズ)」とは、「Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)」の略で、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営する、コンピュータ・ネットワーク・システムです。
会員間で、物件に関する情報交換がリアルタイムで行われ、「情報の更新頻度」「詳細な絞り込み」がシステムの特徴として挙げられます。
土地情報総合システム
出典:「土地総合情報システム」
土地総合情報システムは、国土交通省が公開しているデータベースで、不動産取引を行った人を対象に行ったアンケート情報がまとめられています。
土地総合情報システムでは、幅広い種別の不動産にかかる取引情報が公開されており、空き家そのものには値段がつかず、“土地のみ”で売却された事例も参照可能です。
空き家をなるべく相場に近い価格で売却する方法
以上の相場観を踏まえたうえで、空き家売却でなるべく多くの収益を得るためには「高く売るための工夫」も必要です。以下より、一般的なものについて例示します。
事前にハウスクリーニングを行う
空き家を売却する際に少しでも物件価値を高めるなら、物件のハウスクリーニングを実施しておく必要があります。台所や洗面所などの水回りをはじめ、屋内の清掃、庭の除草といった内見も見据えて物件をきれいな状態にして売りに出しましょう。
「天井から雨漏りがする」「壁に穴が空いている」など、物理的な瑕疵(かし)がある場合も、可能な範囲で修復しておく方が、より相場観に近い価格で売却できる可能性が高まります。
リフォームを行う
築古の空き家を売却する場合、居住に耐えられる状態でないのなら、事前にリフォームやリノベーションを実施するのも、相場観に近い価格で売却するための方法のひとつです。これにより、買い手視点では自分で物件を手直しする必要がなくなりますので、購入の意思決定もしやすくなります。
ただし、リフォーム費用が高額になりすぎると、相場観に近い価格で売却できたとしても、手残りの売却益が少なくなってしまいかねません。
空き家売却時に発生する費用にも注意する
空き家を売却する際には、相場観だけでなく税金や必要経費といった「支出金」にも着目しなければなりません。
空き家売却で発生する税金
空き家を売却した場合、譲渡所得税(=所得税・住民税)が課税され、売却益から物件の取得費や諸経費を差し引いた金額に税率をかけた税額を納める必要があります(※2)。ただし、自分の住んでいた空き家を売却した場合は最高3,000万円の控除を受けられ、税率については短期所得・長期所得で異なり、それぞれ以下のとおりです。
さらに、空き家の売買時に売買契約書に収入印紙を貼り付ける形で印紙税を納税します。印紙税は物件の取引金額によって値段が変わりますが、高くても6万円です(※3)。
その他諸経費
空き家の売却時に、書類の用意や各種手続きを司法書士へ依頼した場合は報酬の支払いが求められます。金額は事務所によって異なりますが、およそ10万円前後はかかると考えておきましょう。
さらに、空き家の売却で不動産会社に仲介を依頼した場合、以下のとおり売却価格に応じた仲介手数料の支払いも必要です(※4)。
空き家問題の解決に繋がるマッチングサイト「URI・KAI(ウリカイ)」
同ブログを運営している「URI・KAI」は、全国の空き家を売りたい人・買いたい人同士を繋げるための空き家マッチングサイトです。
基本的にどんな物件でも掲載でき、物件掲載の際には掲載依頼フォームから連絡をするだけで物件の無料査定を行えます。
さらに、マッチングだけでなく「URI・KAI」に直接買取を依頼することも可能です。
売買契約書の作成や法的な手続きについても、「URI・KAI」が宅地建物取引士や司法書士とともに全面サポートしてくれますので、不動産売却に関するノウハウがない人でも安心できるでしょう。
まとめ
空き家を売却する際の相場観は、築年数や立地条件などを踏まえて、各種サービスを利用すれば概算できます。もちろん、本格的な売却活動時には査定依頼を出すことになりますが、自分でも相場観を把握しておけば、それだけ損失を減らせる可能性が高まります。
ただし、築古の物件を相場に近い価格で売却するには、工夫が求められるため、場合によっては更地にして土地のも売却するのも手段のひとつです。
参考:
※1 公益財団法人 東日本不動産流通機構,「季報 Market Watch」,http://www.reins.or.jp/pdf/trend/sf/sf_202107-09.pdf,(2022/06/25)
※2 国税庁「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
※3 国税庁,「印紙税」,https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/inshi301.htm,(2022/06/25)
※4 REDS,「仲介手数料の法定上限金額とは」,https://www.reds.co.jp/system/term/fee/,(2022/06/25)